あやめ池グラウンド

あやめ池グラウンド
 
2004年度という年は色々なことがありました。
バファローズオリックスに譲渡合併され、あやめ池遊園地が閉演、近鉄ライナーズトップリーグから降格した年度です。私事ですが近鉄ラグビー部ОBである父が亡くなったのも2004年でした。
 
その父から、戦中戦後に花園が使えなかった時代は「あやめ池グラウンド」で練習したと、何度も聞かされました。何か思いがあってのことかと思いますが、今となっては知る由もありません。ということもあり以前から調べてみたいと思っておりました。
 
あやめ池遊園地は近鉄の前身である大軌(大阪電気軌道)が大正15年(1926)6月11日に開園しました。昭和4年(1929)にはあやめ池温泉場も開業。遊園地自体の詳細はウィキペディアなどのネットで詳しく分かります。
 
ただ、グラウンド(運動場・小運動場)についての記述や園内での位置、そして大軌ラグビー部が練習したというグラウンドが本当に遊園地内のグラウンドだったのかについても、ネットでは分かりません。
 
まず、遊園地内のグラウンドの位置ですが、下の画像の通り、池の中央に掛かる「菖蒲橋」の南東側(右下側)に陸上トラックがあり「グラウンド」の表記があるのでここに間違いないと思われます。

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「本当にここでラグビーが行われていたのか」という疑問については天理高校の歴史の昭和22年度(1947)の中で「全国大会予選はあやめ池のグラウンド(遊園地内にグラウンドがあった)で優勝する」(「天理ラグビー50年のあゆみ」P.268)と記述があるので、このグラウンドでラグビーが行われたに違いありません。
 
また、この遊園地が大軌(近鉄)の経営だったので大軌ラグビー部がここで練習するのは不思議ではないのですが、次のような記述でそのあたりの事情が分かります。
 
「昭和18年、練習は花園第3グラウンドとあやめ池グラウンド。花園第1グラウンドは使用できる状態にあったが使用していなかった。あやめ池は、その頃事業部の人が部員に多かったためと、相手の指定するグラウンドがあやめ池に似たところが多かったためであろう。集合練習はあやめ池が多く、春、夏を通じて大阪に近い部員はよく花園で走りこんでいた。」(「近鉄ラグビー部50年史」P.25)
 
あやめ池遊園地が事業部の管轄で、その事業部に部員に多く居たので優先的に使用できたのか、遊園地での仕事後の練習に便利ということだったのかもしれません。
 
なお、昭和18年(1943)といえば太平洋戦争開戦から2年経過しており、6月25日に花園ラグビー場の大鉄傘(メインスタンドの大屋根)が国の命令により鉄の供出の一環で撤去されています。この時、同日、あやめ池遊園地の飛行塔とワンダーホイールも鉄の供出のため撤去されています。
 
終戦後も花園ラグビー場進駐軍(米軍第98師団)に接収されてラグビー部員は、このあやめ池グラウンドや橿原運動場を使わざるを得ませんでした。
 
また「近鉄ラグビー50年史」では、昭和22年(1947)の合宿があやめ池グラウンドで行われた(同書P.38)とのことですし、10月7日には近鉄社内のラグビー大会として上本町営業局21-6本社の試合が行われ、翌昭和23年(1948)12月19日にKYRC(関西ヤングメンズラグビークラブ)との試合記録もあります。
 
上述の通り、高校大会の奈良県予選もあやめ池グラウンド行われましたし、以前記事に書きましたように、この時期、天理外語(天理大学)とも頻繁に練習試合を行ったとのことです。

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(昭和22年のあやめ池合宿)
 
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(昭和22年度全国高校大会奈良県予選)
 
近鉄ラグビー部が第2回国体(金沢)に出場し、第1回全国社会人大会(東京ラグビー場=現秩父宮)で準優勝を果たした後の、昭和24年4月から5月にはあやめ池遊園地で「日本ステートフェア」が開催され、翌月6月3日には花園ラグビー場が米軍の接収から解放されました。
 
その後はあやめ池グラウンドの使用記録は見当たりませんが、花園が使えるようになれば当然のことかと思います。
 
昭和35年(1960)の写真では野外劇場にスペースが取られ、グラウンドが狭くなってきているようです。

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(遊園地を北西から見た写真)
 
さらに国土地理院の航空写真で調べると1960年代初頭にはこの場所はまだ広くなっておりグラウンドが存在していたようですが、1970年代の航空写真では遊具が常設されていて、グラウンドは無くなったようです。
 
冒頭の通り、あやめ池遊園地は2004年に閉園し、グラウンドのあった池の東側は現在、近畿大学附属小学校のほか商業施設や住宅になっているようです。永い歴史のある近鉄ラグビー部の一時代に貢献したグラウンドがこの下に眠っています。