■伊丹自衛隊の成り立ち
中部自衛隊ラグビー部のルーツは伊丹自衛隊です。兵庫県と大阪府の境にある伊丹市の陸上自衛隊伊丹駐屯地では昭和20年代末頃に元海軍兵学校の人が未経験者らにラグビーを教えたりしていましたが、1955年(昭和30年)に駐屯地内にある小さな部隊5つで第1回ラグビー大会を、隣接する県立伊丹高校のグラウンドを借りて開催しました。
その後、当時全国の各駐屯地ではラグビー大会が行われ始めており、関西協会の勧めもあって中国・四国・滋賀・伊丹・姫路などからチームを集めて管区大会を行いました。
この大会終了後に管区の参加選手の中から30名ほどを伊丹に集めて1日8時間練習を行いました。また自衛隊ラグビーでは先輩格である九州の選抜チームを招いて西宮第一グラウンドで試合を行い、その後、陸上自衛隊中央大会、防衛庁主催全自衛隊中央大会にも参加します。
■1960年度(昭和35年度)
準決勝の相手は前年準優勝の近鉄。秋の対抗戦(10月29日、花園)では6-3で近鉄を破り大金星を挙げていました。しかし近鉄はその敗戦の経験のおかげで伊丹の戦法を理解しており、この日は余裕の展開。前半5分にPG、25分にルーズ(ラック)から右に展開し前田がトライ、その後伊丹が攻勢に転じましたが一向に得点を奪えず、後半、攻め疲れたのを機に10分に近鉄神庭がトライ、更に18分神庭、28分芦田にトライを許し、伊丹は無得点で敗退しました。近鉄の試合運びの上手さにやられましたが、初出場ながら伊丹の健闘は大いに賞賛されました。
第13回全国社会人大会
・前半(伊丹0T,0G,0P,0D)(近鉄0T,1G,1P,0D)
・後半(伊丹0T,0G,0P,0D)(近鉄0T,3G,0P,0D)
・伊丹メンバー:FW黒川、又川、山田、山根、池内、市川、平田、中島、HB鎰谷、出川、TB宮戸、堀田、永見、平岩、FB藤村。
■1961年度(昭和36年度)
★チームはメキメキと力をつけて行き、1961年(昭和36年)3月から12月まで主要な大学、実業団、部隊、英国海軍チームなどと対戦し実に31試合で26勝4敗1分という好成績。4敗の相手は九州電力(6月)、大阪府警(9月)、近鉄(10月)、大阪府警(11月)という全国でも強豪チームのみでした。
第5回全自衛隊大会
12月12日 1回戦 中部(伊丹自衛隊) ○6-3(0-3,6-0)● 北部(北海道)
12月15日 準決勝 中部(伊丹自衛隊) ○13-8(13-0,0-8)● 東部(関東)
準決勝は前年と同じく優勝候補の近鉄が相手でしたが、前半から伊丹が優勢に試合を進めてゆきます。3分には近鉄ゴール直前まで攻めてTBへ回しましたが永見の持ちすぎで失敗。9分は25ヤードライン左からのPGがポストに当たり失敗。逆に17分頃から近鉄に反撃され攻め込まれます。27分には近鉄がPGを決めて0-3でハーフタイム。後半も近鉄に攻め続けられ3トライを挙げて逃げ切られました。
第14回全国社会人大会(花園)
・前半(伊丹0T,0G,0P,0D)(近鉄0T,0G,1P,0D)
・後半(伊丹0T,0G,0P,0D)(近鉄0T,3G,0P,0D)
・伊丹メンバー:FW黒川、又川、山口、松本、池内、市川、長谷川、平松、HB狩谷、高、TB黒田、堀田、永見、平岩、FB出川。
■1962年度(昭和37年度)
前年活躍しこのシーズンも期待されましたが、部隊の編成替えなどでメンバーが大きく変わり、若返りました。
★この年から関西社会人リーグがA・B・Cリーグの3部制となり、伊丹は大鉄局、KYRC、川崎重工と共にBリーグに入りました。ここで難なく優勝し、翌年はAリーグ入りとなりました。
★しかし第6回全自衛隊大会が始まってみると1回戦で北部(北海道)に思わぬ敗退を喫します。北部は他チームに比べれば傑出した強豪ではありませんでしたが、中央大ОBの越智主将を中心にまとまりのあるチームでした。
第6回全自衛隊大会
12月11日 1回戦 中部(伊丹自衛隊) ●6-10(3-5,3-5)○ 北部(北海道)
・前半(伊丹1T,0G,0P,0D)(北部0T,1G,0P,0D)
・後半(伊丹1T,0G,0P,0D)(北部0T,1G,0P,0D)
・伊丹メンバー:FW今田、今井、中谷、松本、平松、市川、平田、柴田、HB狩谷、藤村、TB黒田、平岩、永見、宮戸、FB高。
試合は近鉄優勢でしたが伊丹FWの頑張りもあり食い下がりました。しかし17分に近鉄神庭にトライを許し、28分にもPGで、31分には田中のトライを許します。後半も伊丹の頑張りは衰えませんでしたが結局完封されました。点差は過去2回の対戦より少なかったのですが、やはり近鉄を破ることは出来ませんでした。
第15回全国社会人大会(秩父宮)
1月2日 1回戦 伊丹自衛隊 ○11-9(6-3,5-6)● 富士鉄釜石(東北)
・前半(伊丹0T,0G,0P,0D)(近鉄2T,0G,1P,0D)
・後半(伊丹0T,0G,0P,0D)(近鉄0T,1G,0P,0D)
・伊丹メンバー:FW原田、今井、中谷、松本、平松、市川、小林、柴田、HB狩谷、藤村、TB宮戸、平岩、永見、大西、FB高。
■1963年度(昭和38年度)
★前年からの部隊の編成替えでメンバーが大幅に替わり、更に監督の堀場靖重郎が退役し少し行き詰まり感がありました。
関西社会人リーグではAリーグ初参戦ながら、初戦の近鉄には完封負けを喫したものの、次の大阪クラブには22-3の快勝。第3戦(最終戦)の大阪府警戦では13-11と2点差で競り勝ち、4チーム中見事2位に食い込みました。協会関係者から、「練習をよく積んでいるので走り負けることは無く、あとは試合の駆け引きと得点機の決定力が備われば」と言われました。
関西社会人Aリーグ
・前半(伊丹1T,1G,0P,0D)(府警1T,0G,0P,0D)
・後半(伊丹0T,1G,0P,0D)(府警:1T,1G,0P,0D)
・伊丹メンバー:FW今田、今井、原田、松本、池内、市川、大場、小林、HB狩谷、藤村、TB宮戸、黒田、永見、大西、FB出川。
1回戦は大差で航空自衛隊を破りましたが、準決勝(2回戦)では東部と引き分けました。試合は中部(伊丹)がTBパントから永見が中央にトライ(ゴール成功)して5-0とリードしましたが、東部も見事なFWのパスからポスト左にトライし、ゴールも決まって5-5で前半を終了。後半も互角の戦いで5-5のまま終了。抽選の結果、中部(伊丹)が決勝へ勝ち進みました。
決勝では、松戸自衛隊が主力になっている直轄チームが相手でした。中部(伊丹)は優勢に試合を進めていましたが、前半、中部(伊丹)のミスから直轄の山崎にゴール真下にトライされ、ゴールも成功。後半も中部が攻めましたが22分の永見のトライのみ。逆にそのあと、直轄の一ノ瀬にトライを許しました。そのまま試合は終了し3-8で直轄が優勝しました。直轄は5年ぶり3度目の優勝でした。
なお、この大会で選出されたベストフィフティーンには中部(伊丹)から松本信夫(LO、中央大出)、黒田嘉安(WTB、宿毛高出)、宮戸利男(WTB、熊野高出)、出川裕洋(FB、中央大出)の4選手が選ばれました。
12月4日 準決勝 中部(伊丹自衛隊) ○5-5●(5-5,0-0) 東部(関東) (中部の抽選勝)
・前半(伊丹0T,0G,0P,0D)(直轄0T,1G,0P,0D)
・後半(伊丹1T,0G,0P,0D)(直轄1T,0G,0P,0D)
・伊丹メンバー:FW今田、今井、原田、松本、池内、市川、大場、小林、HB狩谷、藤村、TB宮戸、黒田、永見、大西、FB出川。
★花園での第16回全国社会人大会では組み合わせの運悪く1回戦から関東の強豪横河電機との対戦となりました。同じ自衛隊でも帯広自衛隊(北海道)は三菱水島(中国)という楽な組み合わせからすると、関東で谷藤機械や日野自動車等と共に優勝を争っている横河が相手なのは厳しい相手でした。
案の定、前半から激しい戦いとなり横河に2トライを取られ3-8で前半を終了。後半も1トライを挙げられ1回戦敗退となりました。ここまで4回の全国社会人大会出場のうち、1回戦敗退はこれが初めてでした。
第16回全国社会人大会(花園)
・前半(伊丹1T,0G,0P,0D)(横河1T,1G,0P,0D)
・後半(伊丹0T,0G,0P,0D)(横河0T,1G,0P,0D)
・伊丹メンバー:FW今田、今井、原田、松本、池内、市川、大場、小林、HB狩谷、藤村、TB宮戸、黒田、永見、大西、FB出川。
つづく